古楽夢 ~四拾壱~

古楽夢(四拾壱)

野尻 伊奈川橋遠景/英泉画

須原宿を少し南へ行くと橋場という集落があり、その南を流れる伊奈川に伊奈川橋が架かっていた。文化2年(1805)刊行の『木曽路名所図会』には、この川は「水流奔騰して其声雷霆の如し。大雨の時、水漲りて畏るべし」と書かれている。この川に橋を架けるために打ち込んだ杭は、大雨になると上流から流れてきた大石によってことごとく流されてしまった。そのためこの川に架かる橋は橋杭のない反橋になった。この橋は川の両岸に石垣を設け、ここから順次せり出して行って架けた橋で、その長さは16間(約29メートル)あった。英泉は川の南から見た伊奈川橋を画材にしている。手前岸には、青合羽を着た旅人が軽尻馬に乗り、馬子に引かれて橋に向かう。その後に風呂敷包を背負った男が続く。太鼓のように反った橋の上には合羽を着た旅人と、両掛を担いだ男が見えている。橋を渡った先に見える家々が橋場である。その右手背後に薄墨色で示された階段があり、それを登り切ったところに岩出観音堂が建っている。この堂には、天生年間に村民が田を耕している時に見つかったという銅像が祀ってある。この像は頭上に馬頭をいただき、憤怒の相をした馬頭観音で、旅の安全を願う旅人達、特に馬の守護を願う馬持達の信仰を集めていた。



阿古陀形筋兜のご紹介

黒漆二十八間阿古陀形筋兜

鉢は鉄地黒漆塗二十八間阿古陀形で、筋には鍍金の覆輪を施し、腰巻上に檜垣を廻らしている。

黒漆四十八間金覆輪筋兜

鉢は鉄地黒漆塗四十八間阿古陀形で、筋には鍍金の覆輪を施している。古式な眉庇には覆輪を廻らし、菊花文・獅子・牡丹をあしらった三鍬形台を設けている。